フレンチ・ポリシング



tamaniwaワークショップの標準コースでは塗装は省略されています。塗装の技術は短時間では習得できないということ と、行程自体が長時間を要し、とても2週間のなかに納めきれないというのがその理由です。しかしギターは塗装を施さ れて初めて楽器として完成します。塗装はギター製作とはまったく別個の作業ですが、その概略を理解してもらうため にこの項を設けました。

ここではシェラックを使っての塗装をご説明します。シェラック塗装のうちでもタンポによる塗装、いわゆるフレンチ ポリッシュといわれる塗装法です。ギターの製作法と同様フレンチポリッシュにも様々な方法があります。それこそ施す 人の数だけあるといってもいいでしょう。ですからここでご説明するのはあくまでも私の採用している方法であって、 これが正しいフレンチポリッシュだというわけではありませんからこの点は誤解のないようにしてください。また同じ 方法を採用しても、作業する人によって、タンポンに含ませる塗料の量、タンポンにかける圧力、時間などは違いま す。また研磨の頻度も変わってきます。各自がそれぞれの好みにあったやり方を見つけだすことが必要です。要するに 「経験」することが大事なのです。

シェラック 溶液には寿命(だいたい半年くらい)がありますから、あまりたくさん作っても無駄にな ります。せいぜい200ccくらいでいいでしょう。私はもっと少なく、一度に120ccしか作りま せん。ちなみに古い溶液を使うとどうなるかというと、塗装面はいつまで経っても触ると ベタベタして、乾いたと思っても洋服の生地の跡がついたり、こすれたところが白っぽく ツヤがなくなったりします。120ccの無水アルコールに 28~30グラムのシェラックフレークを溶かします。温度条件がよければ二日くらいで溶けます。頻繁に揺らしていれば1日でも溶 けることがあります。溶けきれないカスや不純物がありますから、濾紙(油漉し紙や厚めのペーパータオルなど)を利用してこの溶液を漉します。密閉しやすいビンなどに入れておきます。必 要な分だけスポイトビンに入れておきます。

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シェラックフレーク

ワックスなどの不純物を取り除いていく度合いによって、色の濃さに段階があります。このようなフレーク状のもののほかに、コートボタンくらいの塊などもあります。

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スポイトビン

右からシェラック液、アルコール、そしてジョンソンのベビーオイルです。なぜジョンソンベビーオイルなのかは後ほ どご説明します。

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チーズクロス

最近チーズク ロスと呼ばれるものを使ってみました。目の粗いガーゼのようなものです。油分をま った く含んでいない綿でできています。布の1本1本の繊維が自由に動いて、複雑な面にもまんべんなく当たってくれます。さらに塗面に当たる部分が汚れないようです。

タンポン

チーズクロスを15センチ角くらいに切ります。1枚をなるべく堅く丸めます。もう1枚でその玉を包んで、ちょうど糸で 縛っていないテルテル坊主のようなものを作ります。シッポにあたる部分を持ってぎゅっ と絞るようにして、頭を丸くします。これでタンポンのできあがりです。チーズクロスを使わずに、着古したTシャツなどのジャージを使うこともできます。新しく油分が含まれているような布でなければ平織りの布(シーツのお古など)でもできるということです。自分に合った布を見つけてください。
1枚をなるべく堅く丸めます。もう1枚でその玉を包んで、ちょうど糸で 縛っていないテルテル坊主のようなものを作ります。シッポにあたる部分を持ってぎゅっ と絞るようにして、頭を丸くします。これでタンポンのできあがりです。糸で縛ってほんとのテルテル坊主を作る人もいます。テルテル坊主は最初はあまり大きくしない方がい いでしょう。大きくてもせいぜいピンポンボールくらいにします。
塗装をするための準備をします。まずギター全体にていねいにヤスリをかけます。240番くらいから始めて320番くら いで仕上げます。塗装の前にはヤスリをかける、これはあまりにも当然のことですので結構いい加減にやる人が多いの です。しかし実はこのヤスリ作業つまり下地作りがとても大切なのです。これがいい加減だとどんなにていねいに塗装し ても、いい結果が出ません。平面はかならず当てゴム、当て木を使ってください。この作業が最期の仕上がりに大きく 影響します。力を入れすぎずに丹念にヤスってください。
十分に明るい作業台を用意します。自由に角度を変えて照らすことができるアームライトなどがあると便利です。前方上 部から照射し、光の反射が自分の目に入るような角度で照らして使います。

下塗り(seal coat)

ヤスリかけで出た埃をよくふき取ります。一枚の布(平織りでもニットでも結構ですが、必ず綿を使います)を四つ折 り、または三角に折って、シェラック(以後分量を表すときはSと書きます)、アルコール(同じくA ) を同量(2,3滴)垂 らします。サウンドボードのネックのすぐそばからバインディングの上に布を当てます。そのまま布を持ち上げずにエン ドブロックまでこすります。布にはべっとりとローズウッドの色がついているはずです。布を折って新しい面を出し、液 を追加して反対側をこすります。布は持ち替えたりせずに一気に動かします。ゆっくりで結構です。これはバインディン グやパーフリングの色がサウンドボードに移らないように、色止めする作業です。裏側もパーフリングの白が染まって 欲しくないときは同様に色止めをします。ロゼットの部分も同じように塗ります。一度布を持ち上げたらかならず新しい 面を使うように注意します。これを2回繰り返します。これがシールコートseal coatです。

色止めが乾いたら、次にシェラックを全体に塗ります。濡れた布巾で拭くような感じです。たたんだ布、または丸めた 布、どちらでもかまいませんが、たっぷりと液(同量)を含ませておきます。これをウオッシュコートwash coa tと呼ぶ人 もいます。1時間ほど乾燥させます。これも2回繰り返します。

乾燥したら目止めをします。ギターのバックボードやリブ、ヘッドの表などはたいていはローズウッドが使われます。ロ ーズウッドは導管や気孔が大きいという特徴があります。要するに顕微鏡で見ると穴だらけだということです。この穴を 埋める行為を目止めといいます。目止め剤というものを使います。シリコン系、エポキシ系、天然物など種類がありま す。乾燥の早さや塗面の堅さなどがそれぞれ違います。無色のものを使ってください。ローズウッドの色などに似せたも のもありますが、これはお勧めしません。そのほか軽石の微細分であるピュミスあるいはパミスと呼ばれるものを使っ てローズウッドそのものをこすりだして目止めをする方法もあります。分厚い塗装を目指すのでなければ、サウンドボ ードは目止めをする必要はありません。またかなり我慢強い方は目止めの必要はないでしょう。シェラックだけで穴を 埋めればいいのですから。しかしこれは気の遠くなるような作業です。目止めをすることによってなめらかな塗装面を早く実現することができるのです。

目止めが乾燥したら、240番のペーパーで目止め剤を落とします。どこまで落とすかを判断するのは少しやっかいです。ローズウッドの色が出てきたら、それはやり過ぎです。
少しくらいかすれている方がいいという人はこれで目 止めをやめてもいいです。もう一度シェラックを塗って、さらに目止め作業をやれば完璧です。
ふたたび240番でヤスリます。ホコリを払ったらシェラックをもう一度塗ります。目止めの結果がよければ本格的な塗装 の行程に移ります。

記憶力のいい方は別にして、同じことをくり返しているうちに今はいったい何回目なのか分からなくなってしまうこと があります。そんなときのために作業表を作っておくといいと思います。 これからの作業を表にして作業場に貼っておくのです。作業が終わるたびにこれにチェックを入れておけば、どこまで進んだのかが一目で分かります。経験を積んで、表面の状態から次の作業を推定できるようになったら、この作業表は不要になるでしょう。

セッション1
S5 : A1


シェラックとアルコールの割合はS-5:A-1です。最初にどこから塗りはじめるかは決まりはありません。わたしは 表側に向かって右側のリブから始めます。つまり右利きの人なら膝の上に乗る部分です。リブを上にして台の上に置きます。リブの五等分を目安に塗 り始めます。ウェストから後ろを3分割、前を2分割、合計五つに分けて塗ります。どちらの場合もウェスト部分は別にやらなくてはなりません。パッド(タ ンポン)にS5,A1(ピンポン玉くらいの大きさでしたらS6:A2。以下合計が8~10になるよう にしてください)を含ませます。スポイトの場合はそのまま5滴と1滴です。パッドを塗面につけるときと塗面から離すとき、パッドが停止しない ように注意します。着地の時も離陸の時もパッドは常に動いている状態でなければなりません。パッドは常時動いてい なければならないのですから、パッドは円運動をすることになります。直線運動では方向が変わるときに一瞬停止して しまうことになりますから。一回目はおそらく滑りが悪く、少ししか濡れないはずです。五等分した一カ所をせいぜい1回塗るのが精一杯でしょう。表面はひどい状態になっているはずです。構わず次に行きましょう。

リブ1の次は表、リブ2,バックと進めます。こうすればいま塗った面は自分より遠くへ行きますから触らずにすみます。パッドは直径3センチから5センチほどの円を描きながら進めます。全体をま んべんなくこするように注意します。特に円の周辺部、バインディングの近くなどは回数が減りますから十分にこする ようにします。パッドが楽器の縁から落ちないように注意しないと、爪などがあたってキズをつけてしまうことになり ます。パッドに含ませた液がなくなってきたなと感じたら液を補充します。このセッションでは液はどんどん吸い込まれますから、すぐになくなるはずです。表や裏 の広い面はおおざっぱに4等分ないし6等分にエリアを決め、それぞれのエリア内を集中して塗り込んでいきます。パッ ドの大きさや含ませる液の量にもよりますが、はじめはあまりエリアを大きくしない方がいいでしょう。各エリアはお 互いにオーバーラップします。

すべて終了するのに1時間半から2時間かかります。
塗り終わったらすくなくとも3時間は乾燥させます。タンポンにはスポイト2本分くらいのアルコールを含ませて密封容器に入れて おきます。

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ポリッシングの服装

セーターを着用した腕が見えますが、よほどの寒がりでな ければこれは避けた方がいいです。シェラックに限らず塗装にホコリは大敵です。特に行程の初期には気をつける必要が あります。個人の工房では塵ひとつない状態など期待できませんが、せめて自分からはホコリを出さないようにしまし ょう。毛足の短い衣類を着た方がいいでしょう。腕カバーも有効です。

第1セッションの結果

前回塗った面はこんな風になっています。窓の光が写りこんでいます。まだむらむらです。タンポンが滑らないのですから当然ですね。タンポンの回転の速さは1秒間に2、5回から3回くらいを目安にします。

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セッション2
S5 : A1

セッション1をくり返します。パッドが描く円は前日よりだんだん大きくなります。これ はパッドの滑りがなめらかになってくるためです。次の場所に移動する前には、木目方向 に長くなる楕円運動を心がけます。ここでひとつ注意することがあります。これからのち各 セッションを開始する前にかならずわずかに湿った布で塗装面をきれいに拭いてくださ い。表面にはホコリなどが乗っています。これをふき取っておかないと、シ ェラックと一緒にすり込まれてしまうからです。

パッドの滑りが悪く、引っかかるようでしたら(必ず引っかかります)、ここでベビーオイルの登場です。
潤滑油として使うオイルは、これも人によって異なります。オリーブオイルがいいという人、リンシードオイル(亜麻仁 油)だという人、植物油がいい、いや鉱物油だという人、様々ですが、いろいろ試した結果わたしには「ジョンソン」ベ ビーオイルがいいということになりました。ジョンソンベビーオイルは鉱物油ですが添加物ゼロです。溶剤がエタノールの場合でも 問題はありません。しかしこれはさまざまな要素──パッドに掛ける圧力、シェラックの濃度、量、塗布する頻度など──に よって違った結果が出てきますから、ご自分でいろいろ試してみる必要があります。ただしオリーブオイルなど植物性 の油は概して乾きが遅いですから、塗装の翌日などに表面に浮き出してきます。これをていねいに拭き取ってから続きに取りかかってください。また最終段階でアルコールを使って余分なオイルを取り去る必要があります。鉱物油、植物油のいずれにしてもごく少量をパッドにつけるにとどめておいてください。液を含ませたパッドの表面にベビーオイル をほんのわずかつけるだけです。これでパッドの滑りは大幅に改善されます。

塗装作業は目で確認しながら行うのはもちろんですが、聴覚も触覚も駆使します。耳ではパッドと塗面とがこすれる音 を確認します。塗面ができ上げってくるにつれて、音はなめらかに静かになってきます。指先に感じる抵抗感(実に微妙 な)も順次変わっていきます。シェラック塗装は味覚と嗅覚(換気の悪い部屋では重要)以外の感覚を研ぎすます必要があるわけです。
第1セッションをくり返したら乾燥させます。 厚めの塗装を目指す場合は、このあともう一度このセッションをくり返 します。

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セッション2終了

前日に比べるといくぶんツヤが出てきました。今回は水研ぎをします。wet sandingともいい ます。600番くらいの耐水ペーパーを用意します。使う前に15分から20分くらい水につけて おいてなじませます。

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耐水ペーパー

私の工房では9ミクロンと30ミクロンのフィルム(JISでだいたい#1200,#600に相当するのではないかと思います)とP800, P1200を使います。また使われている粒子によってG, A A, WA, CC, GCなどの記号が書いてある場合もあります。

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タンポン

チーズクロスで作ったタンポンです。やや小さめです。

水研ぎとセッション3
S4:A2


セッション2を2、3回やったら水研ぎをします。wet sandingともいい ます。600番くらいの耐水ペーパーを用意します。使う前に15分から20分くらい水につけて おいてなじませます。ところでこのペーパーの番手は国によって規格が違います。どの国の 製品を用意するかによって番手が異なりますのでご注意ください。ギター製作に必要と思 われる部分だけを選んで比較してみます。いずれも手研磨の例です。機械を使う場合は一段 階以上番手をあげた(つまり目を細かくする)方がいいでしょう。どの製品でもおおよそ400 番くらいから耐水ペーパーがあります。私の工房では9ミクロンと30ミクロンのフィルムやP800、P1200を使います。

耐水ペーパーと違って、フィルムは長く水につけておく必要はありません。この段階では シェラックの層はごく薄いですから、そっとなでるように研 磨します。特にバインディングの角などはすぐに地肌が出て しまいますから力を入れないように気をつけます。乾いた状 態ではこすらないこと、ペーパーは常に濡らしておくこと。
シェラックの溶け出た水は頻繁にふき取っておきます。ふき 取ったのち光にすかしてサンディングの結果を確認します。
パッドの軌跡の周辺などにシェラックが固まっていたりしますからよく確認します。この ときも触覚を活用して指先で確かめながら行います。
均一にヤスレたと思ったらそのまま1時間ほど乾燥させます。


第3セッションに入ります。第3セッションではいままでよりアルコールの量が多くなります。S-4 : A-2(or S-6:A-3) の割合です。
各エリアの終了時にはパッ ドを大きく動かして、エリア全体を軽く伸ばすような感じで塗ります。最後のエリアが終わったときには、新しくシェ ラックを補充して、すべてのエリアの境界を消すようにして、表や裏の全体を木目方向に直線的にこすります。すべて の面が終わったら最低3時間はおきます。続いて第4セッションです。

セッション4
S4:A2


第3セッションと同じくS4に対してA2の 割合です。ところでここまでネックやブリッジ周辺の塗装に関しては触れてきませんでし た。これは私がネックやブリッジを貼り付ける前に塗装を施してしまう製作法を採用して いるからです。しかしヒールとリブの接点、フィンガーボードとサウンドボードの接点、 ブリッジの周辺というのがもっとも塗りにくいところなのです。すでにネックもブリッジ も貼ってあるという場合は、いままで使ってきたタンポンでは塗装ができません。小さな タンポンを作るか、布を折りたたんで使います。このとき注意しなければならないことは、パッドの面積が小さくなりますからいままでタンポンにかけてきた圧力と同じ力で擦ってはいけないということで す。含ませる液も少量にしなければなりません。擦る範囲が小さいですから、ついつい同じ場所を何回も擦ることにな ってしまいます。その結果すでに塗ってあるシェラックを溶かすことになってしまい、塗面はガサガサになるということになりかねません。常に遠く離れたところまで寄り道してまた戻るということをくり返してください。

このセッションのあたりからバックやリブなど目止めをした場所は、幾層も重ねられたシェラックがそれぞれ光を反射 して、ホログラムのような効果が見えてきます。目止めをしていないサウンドボードはまだかすれが目立つような状態 です。目が詰んでいる材の場合冬目(木目の色の濃いところ)にはシェラックが浸透せず、波板のような感じになりま す。なんどか水研ぎをするうちに目立たなくなりますが、できあがってからも乾燥が進むうちに波板状態は現れてきま す。これが気に入らないという人はサウンドボードにも目止めをしなければなりません。

セッションが終わったらこのまま放置します。空気が乾燥していて、温度が適当であれば(すくなくとも20°C以上)2, 3時間後に次のセッションに入ることもできます。しかし一見表面が乾いたように見えても、内部ではまだということが よくありますから、経験を積むまでは急がずゆっくりと進める方がいいでしょう。朝と夕方に1回ずつセッションを行う ということもできます。ただし乾燥だけははしょらないように。条件がよければ2日くらいで仕上げてしまうこともでき るそうです。アメリカの製作家R. E. Bruneは自分の息子は一日ですべて完成したといっています。(American Lutherie 誌 #79)しかしかなりの体力を必要としますし、乾燥はどうしたのかと疑問に思います。
場合によってはこのセッションをもう一度くり返します。

水研ぎとセッション5
S3:A3

フィルムμ30またはJAS800番くらいで研ぎます。私は当てゴムをしたり、右手の指3本の腹を使っ てできるだけ平になるように擦ります。特にある特定の場所だけを集中的にヤスル場合には、かならず当てゴムをしてく ださい。せっかく塗り重ねたものを取ってしまうのはもったいないような感じですが、今 回は前回よりももっと丹念にヤスリます。塗面の60%以上がツヤ消しの状態になるように します。1時間ほど乾燥させます。

第5セッションに入ります。このセッションからS3 : A3(or S4:A4)になります。シェラックとアルコールの割合をはじめから最後まで変えずに行う方法もあります。ただしこの場合は各セッションの終了時に、「油抜き」をする必要があります。塗面 に混ざっているオイルを押し出して、ふき取る作業です。簡単に説明しておきます。アルコールを3,4滴含ませたパッド で端から端まで擦りあげます。ある程度力を入れて大きな円を描くようにし、最後に文字通り押し出すような動きで長 い直線を引きます。オイルを表面に出す作用と、パッドの軌跡を消す効果があります。だんだんとシェラックの量を減ら していく方法ではアルコールが多くなってくる段階でオイルは押し出されますので、あまり油抜きを意識しないですみます。ただ各エリアの最 後に大きな円を描き、またセッションの最後に塗面全体にパッドを大きく動かして軌跡を取る動作は必要です。

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セッション3終了

セッション4に入る前の状態です。前と同じことを繰り返します。

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セッション4のあと水研ぎ前

これから2回目の水研ぎです。同じ配合のシェラック液を何回塗ったら水研ぎをするかは、そのときの塗面の状態によって変わります。まだ足りないなと思ったらもういちど同じセッションを繰り返してください。

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セッション6終了

3回目の水研ぎ前の状態です。映り込む窓の輪郭がはっきりしてきました。これで充分と判断したら3回目の水研ぎです。従来どおり800番(µ30)で研いだあとさらに1200番(µ9)で研ぎます。

水研ぎとセッション7
S2:A4

セッション6(第5セッションと同じ)をくり返したあと、水研ぎをします。この段階でかすれや不完全なところは取り除きます。不満な部分は集中的に 攻めて、全面が同質になめらかになるようにします。またサウンドボードやバックの終了時には、ボディ全体を大きく 直線的に擦るようにパッドを動かします。ここで一晩乾燥させます。まだ少し不足と感じられる時はさらにもう一度第6 セッションをくり返します。湿度が高めの時は2晩乾燥させます。
乾燥したら3回目の水研ぎです。初めにいままでと同じ800番(µ30)でヤスッたあと、次に1200番(µ9)で繰り返します。800番で生じた傷を除去するためです。研ぎ終わったらよく絞ったきれいな布で全体を拭きます。1時間ほどおきます。
第7セッションを開始します。まずパッドの外側の布を新しくします。シェラックの割合 も S2:A4(or S3:A6)へと変化します。全体がむらなく塗れるまでくり返します。いままで一カ所に3回くらい液を補充していたのでしたら、このセッションでは4,5回にしてください。大きなキズやケバが見つかったときは、水研ぎをした上で問題の 場所を塗り直します。この頃から毎回オイルをつける必要がないような状態になります。終了後3〜4時間乾燥させます

セッション8

第7セッション(S2:A4)をくり返します。問題がなければそのまま続けます。問題があれば水研ぎからやり直しま す。すでにお分かりのように、すべてのセッションはこの通りである必要はありません。乾燥の終わったときの状態でさらにくり返すことも可能です。
こんどはいままでの倍ほどの時間(6時間〜18時間)乾燥させます。
この段階で気になる点があったら、さらに第7セッションをくり返します。水研ぎを追加し てもかまいません。満足がいったところで充分に乾燥させてください。

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セッション9


乾燥が終わった状態です。
窓の輪郭がくっきりと映り込んでいます。

すべてのセッションが終わったら、1週間から10日間そうさせてできあがりです。

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セッション9&10
S1:A5


すでにパッドは余分なシェラックがたまって柔軟性を失っているはずです。一番外側の布 はもちろんのこと、中身もソックリ新しいものに取り替えましょう。
セッション9( S1:A5 or S2:A8)の割合で溶液を含ませます。いままでと違う点は動きを大きくすること。塗り跡が残らなくなるくらいパッドが乾くまで擦ること。またバックやトップなど 大きな面をやったあとは、もう一度液を補充してこんどは全体に大きく擦ること。リブは少しやりにくいですから、で きる範囲で結構です。これを2回くらいやります。終了後翌日まで乾燥させます。

セッション10 (S1 : A5)
前日の作業をくり返します。特に次の面に移る際の作業(全体に大きくパッドを動かす)は念入りに 行います。パッドの円形の軌跡が消えるまでくり返してください。全部を塗り終わったら1週間から10日間乾燥させてできあがりです。

これでお分かりのように非常に条件のいい日が続けば、7日から10日間で塗装は完了できるということになり ます。しかし現実にはそうはいきません。乾燥の具合を見ながら進めてください。急ぐのは禁物で す。通常は10日から2週間はかかると思ってください。また好み(あっさりしたのがいいか、ぼってりしたほうが いいか)によっては作業は最大で2倍になるでしょう。すべては経験です。ここに書いてあるとおりにやれば必ずうまくいくというわけではありません。私は塗装はなんどか失敗を重ねて初めてコツを得られる技術だと思 っています。失敗にめげずにがんばってください。

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